YouTube訴訟とネットにおけるコンテンツの著作権
テキスト、画像、音声、動画とインターネットは徐々にそのハンドルできるコンテンツを広げてきました。いや、むしろコンテンツという意味では比較的黎明期から技術的に可能だったことですが、ブロードバンドの普及や、クライアントPCのスペックの向上、そして何よりユーザへの啓蒙活動、インターネットのコンテンツをハンドルし得るだけのリテラシーの浸透というのが、現在の状況を生んだのだと思います。昔は自分が欲するコンテンツを得るために、必死にあらゆる漁場を探し回らなければいけませんでしたが、今は糸を垂らせば欲しいコンテンツはすぐ釣れる、コンテンツの釣り堀状態です。
2006年上半期のインターネットにおけるビッグサプライズと言えばYouTubeの流行でしょう。動画を投稿しシェアするためのあまりにも簡便な仕組みは、サイトが日本語化されていないにも拘らず、日本からのユーザ数200万人を超えているという人気です。今ではGoogleやYahoo!などの動画サービスよりも多くのユーザを抱えています。日本の企業もこの「YouTube型動画投稿サービス」に目をつけ、サイバーエージェントのAmeba Vision、フジテレビのワッチミー!TVなどが次々にリリースされています。保守的と言われる放送局までもが参入していることから、この分野への期待感と乗り遅れたくない危機感がうかがえます。
YouTubeで公開される動画はQVGAサイズ(320×240)、Flash Video形式で、長さも5分程度のモノが多く、お世辞にも高画質とは言えませんが、インターネットで見たい動画が必ずしも高画質である必要はないということを証明したとも言えます。インターネットで重要な「速報性」、「同報性」、「話題性」という部分でYouTubeのスタイルは優れています。日本でもUSENの運営するGyaoが登録視聴者数で1000万人を越えたという発表がありましたが、Gyaoはインターネット上の放送局の一つであり、YouTubeのような「ユーザ参加型の動画発信共有サイト」ではありません。Gyaoが1000万人集めてるのも凄いですけどね、広告媒体としてもかなりの評価があるようですし。
フリーランスのニュース記者が人気のビデオ共有サービス「YouTube」を著作権侵害で提訴した。YouTubeのWebサイトがユーザーに、著作権で保護された同氏の著作物のコピーを奨励していると主張している。
1992年のロサンゼルスの暴動や、1994年のO・J・シンプソン氏の高速道路でのカーチェイスをヘリコプターから撮影したことで名を上げたロバート・ター氏は7月14日、米連邦地裁で訴訟を起こした。ター氏の撮影した映像が同氏に無断でYouTubeに投稿されて出回っていると訴えている。
YouTubeは、この訴訟は成立しないとしている。ター氏のビデオクリップは、同氏の提訴を受けてただちにYouTubeサイトから削除されたと、YouTubeの広報担当者ジュリー・ズーパン氏は声明で述べた。
「われわれは、すべての著作権保有者に協力しているようにター氏にも協力し、使用が許可されていない作品はすべてわれわれのサイトから削除したいと考えている」と同氏は付け加えた。
ター氏の訴訟では、YouTubeは、「ファイル共有企業は、顧客に対するオンライン海賊行為の意図的な奨励または勧誘の責任を問われ得る」とした2005年の米連邦最高裁判決に違反したと申し立てられている。
ファイル共有サービスでは既に音楽コンテンツを中心として米国のNapster、日本のWinnyが問題になりました。YouTubeも当初から著作権を侵害するコンテンツに対してのフィルタリングを行えていないということを指摘されていました。ユーザ参加型でコンテンツを作っていくという意味では、MixiなどのSNS(Social Networking Service)では、ユーザがユーザにより招待を受けて参加する形を取っており、ある程度倫理観を持って行動しないと手厳しい評価を受けるという、「自浄機能」があるわけですが、YouTubeにおいてはそう言った「自浄機能」もない、まさに無法地帯に近い形になっているように見受けられます。
日本でも一時期ファイル共有ソフトによる音楽ファイルの違法コピーが大量に出回った時に、専用ソフトを使わないとリッピングできない、CCCD(Copy Control CD)を各レコード会社が採用しましたが、多くのユーザからの反感を買い、撤回せざるを得ませんでした。またこうしたパッケージ商品は東南アジアなどで海賊版が流通しているという問題もあります。
しかし、長期的に見ると、デジタルコンテンツに対しては、著作権保護技術が施されることはやはり不可欠だと思います。しかも、CCCDのようにユーザに用途を制限することなく、流通させ利用させることが可能でありつつも、著作者の保護と責任の所在を明確にできる仕組みが必要です。こういった点において期待されるのが、Creative Commonsです。Creative Commonsではコンテンツにライセンスを付記し、保護するだけでなく、流通させ利用するための手立てを提案しています。当ブログのライセンスもCreative Commons Licenseを使って管理しています。MicrosoftのOfficeシリーズにもCreative Commons Licenseを追加するプラグインが先日発表され話題になりました。
Web 2.0時代においては、ますますインターネット上で様々なコンテンツが発信され共有され加工されてゆくだろうと思われます。しかし、そのコンテンツを守る技術が未成熟のままであると、インターネットの闇、その混沌が一般ユーザにまで表層化してしまう恐れも付き纏います。
今、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いのYouTubeにストップをかけるのは、GoogleでもYahoo!でもその他の競合サービスでもなく、連邦裁判所かも知れません。




