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機能美と装飾美

人の「美」の価値というのは、それこそ十人十色でなかなか定義しにくいところでありましょう。とあるクライアントと酒の席で話にのぼったのが、「デザイナーズ・マンションと名のつく物件は友人知人には薦めない」ということでした。特に掃除がし辛い、できないというところが大きいそうです。これはWEBデザインで言うところの「メンテナンサビリティ」というところだと思います。WEBサイトも言わば「住居」のようなもので、「デザイナーズ・マンション的なWEBサイト」と言われれば、何となく想起できるものはあるのではないでしょうか。一級建築士の資格を持った、インフォメーション・アーキテクトなんて人もいるわけです。

携帯電話でも一時期(現在進行形かも知れませんが)「デザイナーズ携帯」というのが流行りました。AUですと「INFOBAR」とか「Talby」とかですね。実際使ったことがないので、あまり偉そうなことは言えないのですが、僕は社内インダストリアルデザイナーがデザインした、「機能から派生したデザイン」の方が好きです。デザインが牽引するモノ作りというものに対しては、結構懐疑的に見ています。デザインの仕事をしている人間らしくないかも知れませんけど。

例えば橋梁。力学的な合理性で導き出された造形が、ことのほか見る人にとって美しく見えるというところが機能美というやつだと思います。橋を眺めるということは、ロープでできた吊橋から、ベイブリッジのような巨大なものまで、「観光」の対象になるわけですから。Santiago Calatrava氏というスペイン人の建築家がいますが、この人の作品なぞ、構造体としての建築の機能美を、見目麗しい造形美として昇華している好例だと思います。

日本で注目されてるデザイナーの多くは「引き算のデザイン」をしているように思います。しかしながらCalatrava氏のように、機能美を追求しつつも「足し算のデザイン」ができる人もいるのだということを、よくよく覚えておかなければいけないと思うのです。

一方で僕は装飾美にも関心があります。やはりデザインは人の生活を豊かにするためにあるべきで、華やかさを感じさせるデザインはこの装飾美によるところが大きいと思うのです。しばしば装飾は古いものと捉えられる向きもありますが、いやさ人類がこれまで培ってきたパターンやテクスチャというものは、今後も綿々と進化していくものだと思います。仏閣に足をのばして、仏像を眺めたりすると、そこに込められた「魂」を感じられるのは、装飾の力だと思うのです。「理念」や「哲学」より「魂」がより人の心を揺さぶるのだと思います。

人の顔にも「機能美系」の顔と「装飾美系」の顔とあったりするんじゃないですかね。美人の概念は人によって様々ですけど、そうやって大別することはできるんじゃなかろうかと思います。ただ大事なのは、「機能美系」であれ「装飾美系」であれ、結局のところ、その人の顔に面魂(つらだましい)があるかどうかということのように思います。面魂を感じる顔というのはとても魅力的ですし、そういうものは人を惹き付ける力があります。

そう考えると機能美と装飾美はそれぞれ対立しあうものではなく、相互に補完し合って全体的な造形美として完成されることが望ましいということになります。日本人には「中庸の満足」という感覚があります。とても研ぎ澄まされたものでも、とてもぼってりしたものでもなくて、「中庸」のバランスが取れた美こそが、長い年月をかけて人々に愛される造形と成り得るんじゃないでしょうか。

美の追求と探究をサボらずに、徹底的に練り上げないと、そう言った機能美においても装飾美においても中途半端なものになってしまいます。理想的なフュージョンのバランスを、その時々で見定めてデザインに落とし込むことが重要ですね。

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