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全うする

「天寿を全うする」とか「天命を全うする」とか言われますが、「全うする」という言葉が好きです。「目標」や「目的」を受ける言葉というより、「使命」や「約束」を受ける言葉であるということあたりが、好きな理由かも知れません。

「全」すなわち「パーフェクト」ということは、なかなか到達できることではありません。「目標」とか「目的」というところのそれは、To Doリストのチェックボックスが全て埋まっていたり、規定の数値を上回っていたりすれば、それはすなわち「達成できた」ということかも知れませんが、「使命」や「約束」を全うするということの評価は、そうやって事務的に下せないものだと思います。

「天寿を全うする」とか「天命を全うする」とか言う言葉が使われるのは、後世の歴史家が偉人を讃える時か、式で故人を偲ぶ時だと思います。過ぎ去ったその人の人生が振り返って果たして「全」だったのか、評価は第三者によるものなのです。

『鋼の錬金術師』という映画化もされた漫画の台詞で、「一は全、全は一」というのがあります。こういうレトリックは倒置反復法と言いますが、これはなかなか言い得て妙だと思っていて、一は即ち全の鏡であり、全は即ち一の鏡であると。「過」があり「疎」もあるのが人生ですから、全体像を掴もうと思えばこういうモノの考え方は必要だと思います。

ブランディングということも、そのブランドに与えた「使命」や「約束」を、いかにして全うせしめるか、ということのなのかも知れません。「使命」や「約束」を掲げることは簡単です。しかし、問題はそれをいかに全うせしめるかです。いかに大量の広告を打って、新進のアートディレクターを起用しても、サポートセンターの対応がぞんざいではいけませんし、やらせブログでプロモーションを行えば炎上します。これはブランディングにおけるところの「一は全、全は一」ということではないですかね。

言い換えれば「全」をいかに共通認識として共有し、それぞれが「一」に咀嚼するのか、ブランドの全体像を把握しながら、「使命」や「約束」を全うせしめるのかという旗振りと調整役をするのが、ブランドに関わるプランナーの仕事かも知れません。

学生時代に「収束と拡散」という考え方を教わりました。これも「一は全、全は一」という考え方と基本を同じくするものだと思います。複合化の後には単機能化が来て、集中型の後には分散型が来る。そうやってマーケットは生き物のように変容していきます。「木を見て森を見ず」とはよく言われることですが、しかし商売はしばしば「木」に、経済はしばしば「森」に終始しがちです。

「全うする」という言葉はなかなか軽々に口にするべき言葉ではないと思います。一方で、「目的や目標を達成する」ということは勝ったか負けたかの非常にストイックな結果を求める言葉でありますが、「使命や約束を全うする」ということはもう少し包括的に第三者がその結果を好意的に評価できたかというところが価値尺度になってきます。

年の瀬に今年一年立てた目的や目標が達成できたか考えることは重要なことです。しかし、長い人生を全うすることがゴールなのだとしたら、2006年の加藤康祐としての生き方を全うできたかどうか、ということが大事なのかもしれません。

追記:
二段落目の冒頭を

「全」すなわち「すべからく」、「パーフェクト」ということは、
と書いておったのですが、kosukekato.comを読んでくださってるというJさんよりメールで
「すべからく」は必須を意味する「すべきである」という意味の述語「須らく~すべし」だと気付きました。
というご指摘をいただきました。間違った言葉の使い方を1年晒してしまいました、すいませんでした。Jさん、ありがとうございました。これからも宜しくお願いします。

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