紙メディアのこれから
「社内ペーパーレス化」なんてのが叫ばれていた時代もありましたが、最近はどうなんでしょう。ITで紙焼きはいらなくなるなんて話もありましたが、「紙なんか不要だ!」と思ってるビジネスマンはいないんじゃないでないでしょうかね。印刷しなくていいものと印刷しなきゃいけないものの切り分けは進んでいる気がしますが。
知人がブログで「本はインターネットではないがITだ」と書いていたのに驚きました。「IT」は情報通信の略ですから、情報の伝播の媒体としての書籍は、立派な「IT」なんですね。むしろ、原体験的な「IT」であるからこそ、そこには習熟したノウハウと卓越したレトリックがあります。Marshall McLuhan氏の『メディア論』を思い出しますね。
僕はプレゼンテーションを基本的に全てプロジェクターを使わず紙でやります。「話す匠」の人は衆人の注意を集中させるという意味でも、インタラクティブなコンテンツを見せれるという意味でも、プロジェクターを使いこなしているのでしょうが、僕は紙でやります。僕の目を見て話を聞いてくれる人もいますし、紙面と睨めっこしながらうなずく人もいますし、とにかく図表の中に僕の話を書き込んでくれる人もいますし色々ですが、その色々が実は大事なのではないかと思います。
僕がプレゼンテーションをする目的は、素晴らしいプレゼンテーションができる人だという評価ではなく、聞いてくれる人のレスポンスを極限まで引き出し次のアクションに繋げることです。ですから、手元に同じ書面を置いて、同じ話題を同じ目線で仲間としてブリーフィングしているという雰囲気作りが大事なのです。往々にして経験豊富な僕のクライアントを論破しようなどとすると(ほとんど試みたことすらないですが)空振りに終わること必死なので、「講師と生徒」みたいな構図になってしまうのを一番危惧します。
こういう「プロジェクトにおける運命共同体」という雰囲気を作るためには、プロジェクターで滔々と語るより、円卓を囲んで同じ材料について私見を伝えるくらいの匙加減が大事です。だから企画書は紙で見せることにしています。
WEB関連の仕事をしていると、しばしば「君はインターネットの仕事をしているけれども、紙はこれからどうなると思う?」という質問をされます。僕は大概「紙は凄いですよ」という返事を返すことが多いようです。
「紙媒体」ということと「印刷業」ということで大分話の毛色は変わって来るかと思いますが、紙媒体と言うことにはその携帯性、一覧性、パッケージ性、そしてこれまで長い年月で培われてきた表現力というところで、インターネットはまだまだ追いついていないと思います。
勿論、速報性、検索性というところではインターネットが便利です。ただ、コンテンツとしての価値と言う意味で、まだまだ紙媒体は色褪せないと思います。こんなことを言うとアンチインターネット主義者だと思われるかも知れませんが、プロの編集者が介在し管理しリリースされたコンテンツは、まだまだ紙媒体に多く、ネットに少ないですよね。CGMやデータベース化された情報は、「読ませるプロ」によって「周到に用意された」コンテンツではないわけです。
一方、印刷業はなかなか大変のようですね。中国の最新設備の印刷工場を見学に行くと、日本の印刷業者は「太刀打ちできない」とおったまげるそうです。ただ、印刷技術をベースにした新規技術、例えばICカードやICタグ、次世代ディスプレイなんてところでは成長しているようですし、小さなところも細かい所に手が届くとか、無理がきくとか、いうところがありますから、印刷業界に未来はない、ということはないでしょう。
とにもかくにも紙メディアの最も重要なところは、証拠が残る、言質が取れる、発言に責任が伴う、ということだと思います。こういう部分ではインターネットやデジタルコンテンツはなかなかにルースですから、「紙がいらない仕事」というのはなかなか根付かないと思うのですよね。だから、紙で渡す、わけで。
本は日々の暮らしのお供ですが、ある日「コストが嵩むので本は全てデジタル化します」とか、「本は全てデジタルデータなので街に本屋は一軒もありません」とかという状況は僕にとっては寂し過ぎます。だからそういう業界にいる人には頑張ってもらいたいなあ。




