人工知能、知能増幅、融合知
Web 2.0の定義というのは、Tim O'Reilly氏の定義に始まり様々で、僕も説明を求められた時に、当初ほとほと困っていた記憶があります。結局、話し相手に合わせて、Web 2.0的なことというのがどういったインパクトがあるのかという具体事例を挙げて、その時々で説明するというやり方が、「Web 2.0って何なの?」というざっくりとした聞き方をされた時は有効なのかなと思ってました。
そういう意味で田坂広志氏がプロフェッショナル個人に向けて著した本『プロフェッショナル進化論』の出版記念講演で、Web 2.0の意味を「IA(Intelligence Amplifier)」だと述べていたのは、非常に簡潔で、しかし僕のような個人事業主に向けてWeb 2.0を再定義する方法としては良策だなと感じました。
80年代に登場した「AI(Artificial Inteligence)=人工知能」が自らのインテリジェンスの「代替」を求めたのに対して、90年代に登場した「IA(Intelligence Amplifier)=知能増幅」は言わばインテリジェンスの「増幅」で、田坂氏はこれをロボットパラダイムとサイボーグパラダイムという風に切り分けていました。Web 2.0はアトムやガンダム的なのではなくて、むしろ、キカイダーや攻殻機動隊的なのです。
いや、攻殻機動隊などは最早「IA(Intelligence Amplifier)」の先なのかも知れません。人の頭脳がネットに繋がっているわけですから。「AI(Amalgamated Intelligence)=融合知」という言葉もあるようですが、インテリジェンスがネットを通じて様々なインテリジェンスと融合することで更なる洗練を生み出す。そういうところまで僕らは足を踏み入れているかも知れません。
田坂氏はこうしたことから、個=個人シンクタンクでなくてはならないと言っている訳ですが、これは彼がシンクタンク畑の出自だから個人シンクタンクという言葉を呼称として使っている向きが大きい。むしろ改めて「プロフェッショナルはプロフェッショナルであることに甘んじてはいけない」という、「成長を止めたプロフェッショナルは最早プロフェッショナルとは呼べない」というプロフェッショナルの原則論になってくるのではないでしょうか。
その上で人工知能、知能増幅と変遷を遂げてきた情報ツールが「集合知」というネットに接続されたことによる恩恵と相俟って「融合知」なるものに変貌するのだと思います。そして、これを使わずしてこれからのプロフェッショナルが更なる成長を遂げていく道はないと。
このことはただ「ネットで何でも調べられる」ということは違います。相変わらずネットにはない情報、知識、知恵というのは世の中に五万とあります。むしろネットの世界で専門性の高いコミュニティに属していたり、自分の意見のフォロワーを持っていたり、有識者の意見の変容を時系列で追っていたり、という様々な人の様々な思考を「融合」させる、その上で自らの意見、意思を昇華させる、「マッシュアッププラスアルファ」がこれからのプロフェッショナルには必要だということだと解釈しています。ですから、「Mashed-up Intelligence」なんて言葉があってもいいのかも知れません。
昨日、面白い話を聞いたのですが、「最近、人の役に立つ仕事をしたいという若い奴がいるけど、そもそも人の役に立たないことは仕事とは言わない」ということです。これ尤もで色々な人の持っているエッセンスを融合しただけでも駄目で、肝心なのは導き出された解答がクライアントへの解答として正対しているのか、問題解決となっているのかということも、プロフェッショナルにとっての融合知の極めて重要な要素だと思います。
プロフェッショナルがいかに問題解決型であるべきかという話は、波頭亮氏の『プロフェッショナル原論』に詳しいです。奇しくも田坂氏は「進化論」を波頭氏は「原論」を語っているわけで、この辺りの対比というのも全く性質の違う2冊ですから、読み比べてみると面白いかも知れません。
80年代以降、人は「インテリジェンスの在り方」を必死に模索して来ました。田坂氏の講演で「Web 2.0革命」の「革命」という言葉が鼻について、自分にはしっくり来なかったのですが、一方で穏やかな変容とは捉えられないくらい、5年前の自分と比べても仕事の有り様は変わってきていますから、「革命」という言葉に自分の気概と危機感を少し後押ししてもらうくらいのつもりで、プロフェッショナルとしての仕事に向き合っていかなくてはいけないのかなと思います。




