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国民総批評家社会

小林秀雄氏は「勇ましいものはいつでも滑稽だ。人間の真実な運動が勇ましかったためしはないのである。」と言っています。インターネットでたまに見かける「勇ましい言葉」がしばしば「滑稽な言葉」であるのは、この言によって証明もされるのではないでしょうか。

また、小林氏は「批評とは、人を褒める特殊な技術である」とも言っています。人を辱めたり貶めるだけのものは得てして批評とは言えないということです。貶すだけならわざわざ取り上げて論じる必要はないし、貶すだけのことが新しい価値を生み出すこともない。

インターネットでは、特にWeb 2.0とか、CGMとか、UGCとかが取り沙汰されるようになって、オピニオンリーダーが強調したのは「ポジティブ」とか、「良心」とか、「建設的」とかいうことだと思います。勿論、そういうプラスのエネルギーだけが占める世界はしばしば「偽善」と言われるだろうし、『蒼天航路』の曹操の言葉を借りるならば「心の闇」を孕んでいるからこそ人は魅力的であり続けることができるのだと思います。

でもやはり全体感としてプラスのオーラに溢れている方が、その空気に触れていても気分が良いと思います。TVのニュース番組のように大事な時間枠を悲劇や惨劇を演出しようとするメディアより、インターネットが心地よい一つの理由だったりするのではないかと思います。

日本人はYES/NOをはっきり言わない性向があると一般的に言われていますが、僕が最近思うのはYES/NOははっきり「言わない」けれど、実はその人のうちでYES/NOは比較的早い段階で出ていて、それと同時に「結論を導き出すための努力を惜しむ」という性向も日本人にはあるのではないかと思います。

西洋の教育の良いところは「議論」をし尽くすところにあると思います。日本の教育にはなかなかこの「議論」ということが馴染んでいません。自ずと自分で結論付ける習慣ができます。挙手して意見を述べることはあっても、相手と徹底抗戦する必要はないので、結論を導き出すために権謀術数を張り巡らす必要がないのです。自分で結論付けちゃうわけですから。

それは実は結論を導き出すために本来通るべき工程がすっぱ抜かれるということで、ともすれば「結論を導き出すための努力を惜しむ」ということになりかねないのではないかと思うのです。日本語の内にそういうニュアンスを探すのであれば、「短絡的」という言葉があります。「はしょる」という言葉もあります。そういうことではないかと思うのです。

ニーチェやゲーテの名言集を読んで、「良いこというなあ」で終わっては駄目で、その結論になぜ自分が打ちのめされたのか、なぜ著者はその結論を導き出したのか、という「人に対する興味」ということを忘れてはいけないのだと思います。

「知」は本来「人」と切り離され得るものではありません。それが「知識」と「知恵」という対比なのか、「形式知」と「経験知」という対比なのか、いずれにしても肝心な「知」は人の中にのみ存します。そして人の知には収集があり思索があり分析があり時間があります。そこに至る「経緯」というものがあるのです。行間を読ませる文章というのは、そう言った思索風景を読者に類推させるということに他なりません。

何かのニュースソースを材料に、自分の見解や見識を述べるというスタイルは本来批評であるわけですが、しばしばインターネットの利便性は「スゴイスゴイ」と「全然ダメダメ」に物事を収束させがちです。面頭向かってYES/NOを言わなかった日本人も、メールやブログなら比較的言いやすいのかも知れません。それで自分の立場は明確化されますが、それだけのことでしかありません。

個人が様々な情報を発信できるようになるのであれば、他者への批評ということは、小林秀雄が生きた時代よりむしろ思い遣りが溢れるべきで、それが良い評価であろうと悪い評価であろうと他者への丁寧な理解に努めることこそが、あちこちに「批評」が蔓延するこれからの社会においては重要なのではないかと思っています。

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コメント

ポジティブが大事なのは、そこからしか機会が広がらないからだと思っています
ネガはどちらかと言うと防衛なので、良くて現状維持です

過去の良かったことは悪かったことは執着の原因になり
未来のネガティブな面は、行動しない理由になります

未来のポジティブな面に強みを終結させることが、成果を引き寄せるのだと思います

そんなことを加藤さんの文章を読んで思い浮かびましたよ

コメントありがとうございます。励みになります。
ネガティブは自己防衛ということ非常に納得です。

なんか個人仕事って、
一人で延々とアイデア駅伝をやっているようなもので、
しかし、中継地点に行くとたまに代走の人がおられたり、
補給地点で栄養をプラスしてくれる人がいたり、
心温まる観衆がおられたりするのだと思います。

自己満足で終わっては駄目ですが、
気分良く走り続けるためには、
健全なアイデアの新陳代謝が必要で、
ポジティブに考えるからこそ次の一歩が踏み出せるのでしょうね。
先達の話って感銘を受ける話にしても、打ちのめさせる話にしても、
ある種の爽快感を伴う話が多いですし。

「未来のポジティブな面に強みを終結させる」ということ、
大事にしたいと思います。

たしかにそうだよね。
↑書いてあることよくわかる。

相変わらずこむずかしい事ばかり書いてますな、先輩。
たまには日常に関して書いてくださいよ。笑。

いやあほら、日常とかホント日常で今更書いてもねえって感じだし。
(しかし君の日常を綴った文章はとても面白いよ)

最近は扱うトピックが割と複雑だったとしても、
用いるキーワードが割と専門的だったとしても、
メッセージは読み手にすんなりきちんと伝わるように書きたいなあ、
などと思っております。

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