Eco Resonance
Posted on | 2006/8/19 6:29:40
Bank Bandというバンドがあることは知っていましたが、何故「Bank」 Bandなのかということを知りませんでした。小林武史氏(Mr. Children、My Little Loverなどの音楽プロデューサー)が主幹を持って行っている、AP Bankなる会社組織の活動の一環だったようです。「可能性ある新しい未来をつくろうとしている環境プロジェクトに融資を行う」というのがその主旨だそうでして、昨日小林武史氏がTVに出ていて「Eco Resonance」ということを提唱していました。
しかめっ面にならない、押し付けがましくならない、優等生にならない。
もっと、人間であることに無理なく素直でポジティブなエコ意識。
そういう意識こそ、ずっとその人の中でつづけていける、
そしてその人の周りの人たちにも広がっていけるものだと思うのです。
この活動が面白いと感じたのは、「啓蒙」でも、「批評」でもなく、「融資」というアプローチの仕方でエコということに取り組んでいることです。高潔な精神論を振りかざすわけではなく、ただビジネスに対する融資として、お金という道具で問題に取り組むというのは、逆に関わる人の思想や思考に振り回されることなく結果を出していくための手法として有効かもなと思いました。
一方で僕は「エコ」とか「環境」とか「LOHAS」とか言うことには、ほとほと無頓着な人間です。「ホットヨガ」も「デトックス」も大した興味はありません。ボールと戯れるのは好きですから運動はしている方だと思いますし、綺麗な自然に囲まれて星を眺めて過ごすのも好きです。ただそれはあくまで「自分が気持ちいい」ということの延長線上にあることであって、「自分の取り組みが世の中を少しでも良くする」というような発想は根底にありません。
一方で違うところから世の平衡感覚が少しずつおかしくなってきているなという問題意識は抱えています。例えば、「食」の問題(食の自由を参照)。人が当たり前に甘受できるはずのことが実は当たり前でなかったり、様々な要因で状況が変わってきているということが今の社会の随所にあると思います。「NEET」の問題とかもそうでしょう。こういうことには社会全体としての平衡感覚の失墜ということがあるのではないかと思います。
ただその平衡感覚の失墜の原因をメディアに押し付けるというのも短慮のような気がします。これは日本人としての精神性の問題だったり、人の生活習慣の問題だったりして、人を取り巻く情報の問題というよりは、人を取り巻く環境の問題という気がします。というところが今僕が見出せる「自分」と「環境」という言葉の接点になるわけです。
先日、友人から署名活動の話がありました。六ヶ所再処理工場の稼動の問題です。このことはあまり周知されておらず、メディアでも取り上げられてないようですが、友人からのメールによるとこんなことが起こるそうです。
2日に1回ドラム缶3000本分の核廃棄物が、太平洋に捨てられる
青森から海流にのって岩手や福島や千葉といった太平洋の海岸に広がる
廃棄が始まって1年で青森の魚は、チェルノブイリ原発事故の時に輸入の限界値とされた300ベクレルまで達してしまう(青森県の試算)
どうやら核廃棄物の処理法が未解決のまま(ないし不適当な処理法が採択されたまま)稼動してしまうことが問題のようです。ただ、運営元のBOOMERANGE.NETによるPetitionの項を読むと、「クリーンで再生可能な自然エネルギーへの転換」を謳っており、しかし、このページを読んだ人がその実現可能性を判断できるほどの情報は掲載されておらず、従って友人のメールの情報の信憑性も確定的ではないということになってしまい(友人には信頼を置いているのですが、署名するからには責任を持ちたいので)、賛同予備軍に対して甚だ不親切な説明のしかたではないかと思うのです。
東北電力というと、その礎を築いた1人に白洲次郎がいます。著書、『プリンシプルのない日本』の中で戦後の日本の電力事業をどうやって築き上げてきたのか、その労力を垣間見ることができます。今に至るまでに原子力が採択されたのには多かれ少なかれ時代の「必然」があります。この「必然」を紐解かないで、代替案を実現可能性の説明なしに高らかに提唱しても、それは「高潔な精神論を振りかざす」ことでしかないのではないかと思うのです。
東京では先日大規模な停電がありました。地下街などでは大分混乱があったようですし、信号機が点灯せず交通機関も麻痺しました。改めて私達の生活が電気というライフラインに支えられて成り立っているということをまざまざと感じる機会だったと思いますし、東京全域に渡る停電を3時間のうちに復旧した(これは早いとも短いとも感じる方がいると思いますが、複雑化した電力の流れを管理しているという意味で、東証のシステム障害などと比べても、システム復旧の速度としては迅速ではなかったのかと感じました)という日本の電力会社の底力を評価してもいい点だったと思います。
話を戻すと、そういう意味で、Eco Resonanceを掲げ、融資というアプローチの仕方で、やり方が多分に商業的であるにしても、実行力のある手法と、人を巻き込む仕組みの作り方という意味で、AP Bankのやり方というのは進歩的ではないかと感じたのです。
消費者金融のCMではないので、署名に測定できる効果を求めることは無意味なのかも知れませんが、署名する側も署名を集める側も責任の所在を明確にしてある必要はなるのではないかと思います。
「エコ」ということ自体になかなか関心が向かない僕ですが、今の社会の平衡感覚ということには興味があるので、まずは自分の目が行き届く範囲から、物事の「必然」を生む因果関係をしっかり見つめていきたいと思います。このサイトはそういう場所でもあるのです。


意外と知らない、「ヒトリシゴト」。案外、愉快で、楽しいです。気軽に読める、ビジネスエッセイ。

プランナー、加藤康祐のブログ、kosukekato.com : the idea espressoに掲載したコラム、2006/7/20「歴史は作られている」から2010/5/23「行為が流通するプラットフォームに新しい時代を感じる」を一冊の本にしました。

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