コトとナリ

Posted on | 2009/8/15 0:30:20

本日は珍しく、2パートにてお届けします。「コンテンツと予算」という話と、「コトとナリ」という話でございます。

コンテンツと予算

雑誌は新聞はラジオはテレビは衰退産業だという話は良く聴きます。実際、費用対効果的なこと、それはつまりそれらメディアビジネスがその多くを広告収入に依存しているからなのだと思うのですが、今どこも予算は絞られ、雑誌はそれが顕著で、なまじ小さな所帯がある程度ひしめき合っている状態だけに、僕の好きな雑誌も(EsquireとかStudio Voiceとか)廃刊に追い込まれている状態です。

インターネットが勃興して、ある程度市民権を勝ち得たタイミングで、「俺はテレビなんか観ないよ、新聞なんかとらないよ」というスタイルがある種アーリーアダプタというか先駆者的でありました。

僕はそういうの見ててちょっと違うなあと思っていて、WEBの情報って、こと「コト」に関しては二次情報が多くて、やっぱり基本的に無料で提供される情報というリソースに「予算」をつけられるメディアビジネスってスゴイ、ということは以前から感じていたことではあります。

ネットにも秀逸なコンテンツは数あり、特にニッチなトピックスに関しては、旧来メディアより、ネットメディアの方がよっぽど強いわけですが、さりとて、費用的に時間的にコストを割ける既存メディアってやっぱりスゴイわけで、ネットが発達して来たとはいえ、番組単位でスポンサー取ってこれる(という考え方が旧来的ではあるのだが)コンテンツってほとんどないと思うのです。

例えば世界遺産を圧倒的な高画質で自宅にいながら鑑賞するとか、スポーツを関節の動きまで観察する、というようなコンテンツの細部に至る消費という意味ではやっぱり単位時間あたりの予算が確保されている旧来メディアに一日の長があり、僕みたいにネットメディアに慣れ親しんでいる人間ほど、たまにテレビで非常に秀逸なコンテンツに出会うと(それは非常に数が少ないけれども)、やっぱり作れる人たちは作れるんだなと感嘆させられます。

コトとナリ

ちょっと視座を変えてみると、やっぱりコトにフォーカスしたコンテンツって、単発の企画的にヒットするものはあれど、なまじ情報は無料であるがゆえに、そこに関わる人件費を精算しなければいけないという意味で、旧来メディアにアドバンテージがあるのだと思っています。

逆に言うと、WEBに関しては広告という意味では費用対効果が汲み取り易いんだけれども、WEBのコンテンツ制作の事業採算性をそれぞれのプロジェクトで見ていくというのは、「枠」の概念が希薄なだけになかなか難しい。

だから、大きなパワーを持っているネットメディアは、プロのライターやカメラマンやイラストレーターを雇っても人件費を補填するだけのキャパシティは全体観としてあるのだけれども、スモールメディア、スタートアップメディアはUGC(User Generated Contents)に頼らざるを得ない。なんて言ったって、人件費フリーですから。

ただUGCは玉石混淆で、先述しましたが、「コト」に関するコンテンツは多くの場合、二次情報でしかない。ユニークな、右へ倣えではない分析が入っているという意味で、UGCを称賛することもできるのだけれど、事実を即時に伝えるという意味では旧来メディアがやっぱり有利で、そういう意味ではUGCの魅力というのは違うところに見出さなければいけないのだと思うのです。

というところで出てくるのが「ナリ」です。先に挙げた「ユニークな、右へ倣えではない分析」というのも「コト」というより「ナリ」だと解釈しています。「ナリ」は「ナリワイ」の「ナリ」だと解釈していただくと一番わかり易いと思う。

ようは客観性を求めるのではなく(旧来メディアが客観性を保っているとはとても言えませんが)、むしろ極めて主観的に、ある種私小説的に、発想の起点は「コト」であったとしても、最終的に話が「ナリワイ」に収束していく。言わば、生き様的なものが垣間見えるコンテンツというものに意味が益々出てくるのではないかと思うのです。

メディアが便宜上、公器的な意味性を持つが故に、一人一人のジャーナリストの人生と「コト」との関連性は色濃くは打ち出せ得ないものだと思います。でも個人の発言としてなら言える。しかし、それがネットの登場によってしばしばメディア化しているケースもあるし、ジャーナリズムにおける個性の獲得の裾野が、ネットによってより広がっているようにも思います。

メディアに対して求めているのは「コト」ですが、ネットで幾億人もいる個人に対して求めていることは「コト」よりむしろ「ナリ」ではないかと思います。言わばその人のライブストリーミングを時系列で応援できること。そういう中に新たな学びがあるのだと思うし、既存メディアとの差別化要素ってまさしくそれなのだろうと思います。

kosukekato.comも「コト」より「ナリ」重視です。コンテンツを制作していくことで、よりよく僕のことを理解し、同時にそれを見て楽しんでもらって、ともすれば応援してもらおうという魂胆です。「ナリ」のコンテンツというのは自分が本当の意味での商材で、そういう意味では僕のワークスタイル自体とも共通するものがあるように思います。

最近は、僕の周りでも「コトとナリ」の中間の立場で意見するジャーナリストが増えて、公のトピックスを自分の立場で語るということは、ある種これまで老獪なオピニオンリーダーにしか許されてこなかったことだけれども、若くしてもそういう力を持った人がいるということは、今後のジャーナリズムを考える上でも大事なことではないかと思っています。

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