達のカッコよさについて
Posted on | 2009/2/24 14:20:28
僕は子供の頃から習字とか書道とか個別に学んだことがないのですが、何故か子供の頃からよく「達筆ねえ」と褒められました。その後、あんまり成長してないのですが、病院の受付で看護婦さんに褒められたり、年賀状で宛名で友達の親御さんに褒められたり、そもそもがその当時「達筆」というものの定義もイメージも僕の中には何とも具体的な形がなかったのですが、「達筆」という言葉の何とも凛とした韻律に嬉しかった記憶があります。
中学のときですか、国語の授業で「達意の文」ということを教わりました。作文ってともすれば何に対してそれを書いているのか子供にはわからないんですよね。喋ることに目的は持てても、書くことに目的を持つのはなかなかに難しい。だから子供に作文を書かせる時には「先生あのね、~」と書き出させたりするんでしょうね。僕なんか宿題の絵日記が何が楽しくてやらにゃいかんのかさっぱりわからなくて、休み明け直前になって何か無理くり書いていた記憶があります。
「達意」という言葉に中学生の時の僕は「コミュニケーション」という言葉を当てはめていませんでしたが、まさしく実はそれってそういうことで。中学の国語の授業でこのことを教えてくれたのは、山本先生という背の高い朗らかな毅然とした紳士然とした素適な先生でしたが、この人からは気持ちが良い文章ってどういうものかということを非常に学んだ気がします。
社会人になってからのことは、仕事を始めてからの4年間の影響が大きいのですが、その後、ちょっと出稼ぎに行っていたソフトウェア会社でまたそれまでとは違ったことを学べて、その話は「プログラム設計で学ぶ論理的表現方法」という記事にまとめています。
その後も僕は今日に至るまで文章を書くのが好きで好きでたまらず、まあ面倒くさいと思うこともたまにはあるのですが、喋りより書くほうが得意ですし(それは問題か)、ほぼ毎日ブログの更新してますし(仕事してるのかと心配される)、常に僕が自信を持って得意分野と言える分野であり続けてくれていることはありがたいことだと思っています。
年配の方と仕事をしていて感じるのは、「達観」ということですね。ビジネス全般においてそうである必要はむしろなく、自分のフィールドにおいて「達観」しているので、他のフィールドでの話を聞いても、整理しながら咀嚼していける。僕がネットの話をしても、インターネット触ったことがある程度の人でも「それってそういうことじゃないの?」という形で話を進めていける。
著名な人で「達観」してるなあと非常に強く思う人は司馬遼太郎氏です。司馬史観が正しいか、正しくないか、というところは実は大きく意見が分かれるところで、Mixiのコミュニティとか覗くとそういう議論も沸きあがっていたりするのですが、そもそも歴史を達観している、なんて人がいるわけがないんですね。そんな広大で悠久の言わば「世の全て」を達観できる人なんているわけない。
では司馬遼太郎という人が、何を達観していたかというと、それは「戦後の日本人に必要な大衆娯楽歴史小説の意義」を達観していた人、ということができるのではないかと思います。司馬氏の作品を読むと凄く今の日本ということを大事にされている印象を受けます。ただ悲観しているわけでも厭世的になっているわけでもない。『二十一世紀に生きる君たちへ』という小学生の歴史の教科書のために書いた文書など素晴らしいです。
歴史がファンタジーであるならば、今の日本がリアル、とした時に、リアルを問うためにファンタジーを引用しているのが、司馬史観と呼ばれるもので、勿論綿密に時代考証や取材もされているのでしょうが、読み手にとって大事なポイントは実はそういうことなのではないかと思います。
歴女(歴史に興味を持つ女性)がプチブームらしいですが、『世に棲む日々』読んで萩に行くとか、『篤姫』(司馬氏の作品では勿論ないですが、NHKの大河ドラマで一大旋風ですね)観て鹿児島に行くとかいうことの先に、今の自分の姿を見つめ直すということがあれば、それはある種の「達」で、まあ「達」とまで行かずとも「至」くらいにはなることではないでしょうか。
老後、もしかして、書道をきちんと習ってみようなんていう気になったとしたら、その時は雅号を司馬遼達などと名乗ってみたいなと妄想してしまいました。でも何書くんだろ、僕。


意外と知らない、「ヒトリシゴト」。案外、愉快で、楽しいです。気軽に読める、ビジネスエッセイ。

プランナー、加藤康祐のブログ、kosukekato.com : the idea espressoに掲載したコラム、2006/7/20「歴史は作られている」から2010/5/23「行為が流通するプラットフォームに新しい時代を感じる」を一冊の本にしました。

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