メディアの再定義 – スモールメディアの隆盛とマスメディアの凋落について考える
Posted on | 2010/4/2 19:15:08
最近、恐ろしいことに気付きまして、少なくとも僕が普段鑑賞するコンテンツ、全て自室のPCの前で消費できるようになってしまったんですね。テレビ、ラジオ、映画、音楽、ニュース。ネットにはご存知の通りありとあらゆるコンテンツがありますし、最後の砦は紙の本、なのですが、Kindle、そして日本発売間近のiPadでもご存知の通り、今年は電子書籍元年とも言われているわけで。
家族でテレビを観ながら団欒なんて偶像は遥か昔に崩壊してますし、ラジオは先日radiko.jpが始まりましたし、TwitterやらUstreamやらYouTubeやらなんやら。最近改めて僕のお気に入りはPodCastでして、コンテンツを「ながら視聴」しながら仕事なんてこともしてますし、たまあにNHKオンデマンドで古い番組観ながらEvernoteに鑑賞ノートつけたり、とか。もうね、ぐちゃぐちゃなんですよ、つまるところ。とてもじゃないけど、シーンとかシチュエーションとかでコンテンツ鑑賞が切り分け得る状態じゃない、からマーケティングの世界も随分大変ですよね。いいもの作るしかない、っていう原点回帰になればいいのだけど。
そういう意味ではメディアをコンテンツを届ける方法の違いによって理解することにあまり意味を見出せなくなったというか。自分をとりまく環境があまりに多面的になって来たというか。
メディア・コングロマリットとか言いますと、すごく大きいものを想像します。News Corporationを初めとした。でもそういうものって結局図体がでかくなるわけで、今の時代観に合致しているかというとちょっと疑問。確かに大きな予算を大きなスケールで動かせるという利点はあるかも知れないですけど、贅肉を一杯はらむわけで、そういう巨像が今の細分化して複雑化して分散化した個々人のニーズに対応していけるのかというと疑問があります。
そういう意味で、僕が最近面白いなあと思っているのが、スモールメディアです。スモールメディアと言って例に挙げると叱られちゃうのかも知れませんが、スモールパッケージメディアと言いますか。小さい規模のメディアがコンテンツを多様な形で配信していて、それはテレビ局買って、ラジオ局買って、映画会社買って、雑誌会社買って、みたいなメディアコングロマリットよりも、むしろエッセンシャルでピュアでパワフルな活躍をされてるんじゃないかと思うのですよね。
具体的には日本ですと、greenz.jpとAppetizer Japan。この2つは見てて個人的に面白いです。greenz.jpはエコとかサステイナビリティ、Appetizer Japanはスマートフォンがテーマとなっているようですが、話題はそこにとどまらず、Webサイトは元より、Twitter、YouTube、Ustreamなどのネットにある様々なツール、更にはワークショップやトークショーやパーティと言ったリアルのイベント、企業との直接的な連携などによって、観ている側からも非常にダイナミズムを感じます。それをブランドと言ってしまうと、話が簡単になり過ぎてしまうのだけど、もう少し言うと「メディアのハブとしてのブランド価値を最大限に活用している」というか。
もっと単純化してしまえば「楽しそうな人達が楽しげに楽しんでいるのを誰でも楽しめる」ということなのかも知れません。楽しいって、勿論、面白おかしいということではなくて、エキサイティングだってことですよね。古くはドリフやPopeyeやオールナイトニッポンが時代の空気を作ってきたわけですが、スモールパッケージのメディアが、メディアが持つユーザへのリーチの限界に縛られず、色々なところに顔を出し始めた、そんな感じでしょうか。そういうことにインターネットやモバイルの出現は当然寄与していると思いますし、時代のトピックに敏感に反応している、というところも先を走れることに寄与しているのかも知れませんが、何より個人的にはスモールパッケージであるが故のエッセンシャルでピュアでパワフルなメディアとしての魅力、というのに惹かれています。
他にも彼岸寺などもお薦めです。エコとかスマートフォンとか仏教とか括られると、ともすればこれまでの業界紙的なものと考えられがちですが、そもそも業界をターゲットにしたものではなくて、色々な趣味嗜好がフックに含まれているので、むしろメディアとしての面白さ、コンテンツの面白さ、の方が専門性とのマッチングより先に来ます。
とは言え、今日も『美の壺』NHKで観る予定ですし、映画館で観る映画に勝るものはないですし、オペラは生じゃなきゃ成立しないとこないだ改めて思いましたし、酔った帰りに駅前で歌う青年を見るのは微笑ましいですし、radikoでラジオが大分僕の生活に身近になりましたし、任天堂は3Dゲーム出すらしいですし、iPhoneはHD対応するみたいですし、とか。良くも悪くもこういうことってそろそろどこが偉くてどこが貧粗でということではなくて、個人にとっては並列で、実はコンテンツの届けられ方って最早あまり問題ではなくて、一メディア、一コンテンツのエッセンスがどれだけ魅力的かというところに辿り着いてきてしまったんではないかと思うのです。
そう考えるとNHKがこのご時世に坂本龍馬やってるのとか面白いのですけど、本当に戦国時代か幕末維新かわかりませんが、今年は改めてスモールメディア元年でもあって欲しいなあと思うのですよね。なまじマスメディアの凋落が毎日のように話題に上がるこんな時代にこそ、スモールメディアにこそ、これからのメディアの姿がかかっているとも思える。
個人が発信するネットの情報には信頼性がないから、ネットというメディアには信用性がないみたいなことをテレビ局の人がテレビ番組で言ってたりもしますが、そもそもネット自体はメディアじゃないんですよね、少なくとも。そこにいる個人、もしくは個人の集団が発言しているわけで。そんな中でネットも十全に活用できる、スモールメディアがもっと活躍の場を広げてきたら、メディアということを取り囲むあれこれも、もう少し面白くなってくるんじゃないかと感じています。


Column, Opinion

Appetizer Japan, Evernote, greenz, iPad, Kindle, NHKオンデマンド, radiko.jp, Twitter, Ustream, 彼岸寺

意外と知らない、「ヒトリシゴト」。案外、愉快で、楽しいです。気軽に読める、ビジネスエッセイ。

プランナー、加藤康祐のブログ、kosukekato.com : the idea espressoに掲載したコラム、2006/7/20「歴史は作られている」から2010/5/23「行為が流通するプラットフォームに新しい時代を感じる」を一冊の本にしました。

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